アメリカのフライフィッシング事情
〜 アメリカのコマーシャルフライ 〜
アメリカではコマーシャルフライ(完成フライ)を購入してフライフィッシングを楽しむ人が数多くいます。どんなフライショップを訪れてもコマーシャルフライのディスプレイが一番目を引くようになっています。2003年、デンバーで行われたショウでも完成フライメーカーの出展が数多く見られました。毎年新しいパターンを発表し、新しいタイヤーを発掘し、新しいマテリアルとテクニックを駆使したフライを目玉商品として凌ぎをけずっています。また、より高品質を極め、しかも安価なフライを提供しようと競争しています。それだけ完成フライ業界はホットで活気にあふれているのです。その恩恵を受けて、アメリカのフライフィッシャーはフライボックスを充実させ、持ち駒を増やす事によりあらゆる状況においても、どんなセレクティブなトラウトに対しても対応できるというわけです。
なせ、そんなにコマーシャルフライの需要があるかを説明しましょう。一般的にフライフィッシングが浸透しフライ人口が多いといわれるアメリカにおいても、日常的にフライフィッシングに出かける人口は、プロやガイドの人を除けば、ほんの一握りに過ぎません。
実際、私がよく出かける、人口800万人を有するロサンゼルスの近郊の川でさえ、週末に出かけて出会うフライフィッシャーは、3キロの間で10人を超えることはありません。
平日などは、私一人ということもしばしばです。
フライフィッシングのショップも、代表的なものは2店しかありません。 アメリカ人にとって、フィッシングは、アウトドアスポーツライフの一部でしかないのです。1年に数回しか出かけない人が半数以上でしよう。
平日、仕事が終わればジムに通い、週末はバスケットや野球、フットボールをし、家族でピク二ックを楽しむ、そんな生活の一部にフィッシングもあるのです。
1週間の休みをとっても、家族単位で楽しむことの多いアメリカでは、毎日フィッシングに明け暮れることはごく稀でしょう。まして、毎日山のようにタイングをして、フライを用意する人などは、独身者など一部の限られた人達です。
確かに、自分で得意なものや、入手しずらい物を巻く人は、少なくありませんが、多くの場合、大半を買って揃えることが一般的です。
又、毎年新しいフライが、雑誌等で発表されますが、その有効性が分からぬまま、高い材料を用意し、高度な技術を取得することなど、この合理的、そして、楽しい事を優先するアメリカ人にとって、二の足を踏むことです。
アメリカコマーシャルフライのマーケットが大きい理由の裏には、これらの事実があります。
所得格差の大きなアメリカにおいて、大都市圏の住人で、フライフィッシングを楽しめる層は、それなりの収入を得ている人でしょう。事実、高学歴の人に、愛好者が多いというデータもあります。
独身や、リタイヤした人は別として、自分の時間当たりの収入、仕事後の過ごし方の多様性、夫婦の家事分担、家族への細やかな愛情表現、タイング時間の消費、材料費等と、買った場合のフライの値段を、総合的、かつ合理的に考えれば、当然、フライは買う方が有利ということになります。
確かに、自分で巻いたフライで釣れる喜びも大きいでしょうが、アメリカ人の男性にすれば、妻の機嫌を損ねる、そんなリスクは避けた方が懸命なのです。

|